日本に住む全ての音楽ファンは、夏が近づくと2つの予定だけは、しっかりとスケジュール表に書き込んでおく。7月末のフジ・ロックと8月末のサマー・ソニックである。多くの人々におとってこのフェスティバルは、日常から解き放たれ、仕事を忘れ音楽に没頭できる機会である。しかし去年の夏には、ベルギー・フランダース政府観光局の招きによって音楽フェス、アート、カルチャー、ファッション、歴史、そしておいしい食べ物を巡るベルギーの旅に出ることができた。道中ずっとベルギー・ビールを味わっていたことは言うまでもない。今回、旅の様子をレポートするので、これを読んで皆さんが次の夏ベルギーに出かける気になってくれたら嬉しい。
1. 音楽フェスティバル
ベルギーのフランダース地方は、自ら「フェスティバルの最終目的地」であると謳っている。毎年280ものフェスティバルを開催するとあっては、それも納得である。それらのほとんどは夏に開催され、ポップからジャズまですべてのフェスティバルが存在する。しばしば世界で最高のダンス・ミュージックのイベントと言われるTomorrowlandは、有名アーティストの音楽をアミューズメント・パークで楽しむことのできる、とっておきのフェスティバルだ。よりオールタナティブな音楽のファンにお薦めなのはDour Festivalだが、この5日間のイベントでは日本ではなかなか見ることのできないような、インディーズのアーティストたちが参加する。(去年のラインナップはこちらからどうぞ)。また、全てを少しずつ楽しみたいという人には、8つのステージでそれぞれ違ったジャンルの音楽が提供されるPukkelpopがぴったりだ。
また、ベルギーのカルチャーと音楽の祭典もある。今回の滞在では、ベルギーのアーティストだけにフューチャーした無料フェスティバルMarktrockを訪れた。音楽そのものはそれほど記憶に残るものではなかったが、フェスティバルは中世の市場の街ルーヴェンの中心で行われるため、ロケーションが最高である。15世紀のゴティック様式の建築物に囲まれ、冷たいベルギー・ビールを手にフェスティバルの空気に浸ることができることができるというのは、最高の贅沢であった。
2. ファッション
80年代から、アントワープを筆頭に、ベルギーは流行のファッションの中心地として君臨している。Antwerp Sixの名で知られ、大きな影響を及ぼした前衛的なファッション・デザイナー集団の珠玉のコレクションがが、ベルギーをファッションのメッカの一つとして知らしめることに貢献したことは間違いない。アントワープの市内で、実際にAntwerp Sixの店舗を訪れることができ、我々もドリス・ヴァン・ノッテンやアン・ドゥムルメステールの店舗で、素晴らしいコレクションにお目にかかるできた。Antwerp Sixに留まることなく、アントワープ中にファッションの拠点が存在している。特筆すべきは、こぢんまりとして居心地のいいLouis。ここは25年前にアントワープのファッションを盛り上げた立役者の一人である。今日、マルタン・マルジェラ、ラフ・シモンズ、A.F.ヴァンデヴォースト、その他たくさんの質の良いブランドを有している。筆者が個人的に気に入ったのは、独特のスタイルを持つシャツとスーツのメーカー、Cafe Costumeであった。
ベルギーでのショッピングについて一つ(小声でなら)言えることは、東京と比べてブランド品がずっと安く買えることである。買い物三昧をしたいなら、ベルギーほど打ってつけの場所はない。
3.食べ物と飲み物
蒸したムール貝とカリっと揚げられたフライド・ポテトは、ベルギーの名物だが、これは世界でも有数のコンフォート・フードの組み合わせと言えるだろう。もうひとつ、国民的料理だと紹介されたのが、タルタル・ステーキ。これは、玉ねぎとケーパーで和えられた生の牛肉のミンチで、もちろんフライド・ポテトが添えられる。そう、腹が破裂するほど食べたが、それでもまだ食べたいくらいだった。チョコレートとケーキのことまで話しだしたら止まらない。
ビールに触れずして、ベルギーを語ることはできないだろう。200種以上ものビール醸造所を誇るこの国では、選択肢がありすぎて困るほどだ。それぞれの醸造所が独自の製法で醸造しているため、毎度違ったビールを試すことができる。また、醸造所見学ツアーでは、世界中で愛されるこの飲み物についてよくしることができる。
4.アートと文化
ベルギーでは、それぞれ特色のあるギャラリーや美術館が目白押しだ。金沢21世紀美術館にも作品が展示されているかのヤン・ファーブルをはじめ、この国で現代アートの占める位置は重要である。今回の短い滞在でも、ブリュッセルのBozarや、Jimmy Durhamの作品を展示するアントワープのM HKA、そしてルーヴェンのMなどを廻ることができた。当時Mは、筆者個人のお気に入りSol Lewittの展覧会を開催していた。
ベルギーは、現代デザインの分野においても最先端を行っており、毎年9月にはブリュッセルでDesign Septemberが開催される。何百ものユニークなイベントを通じ、街全体が国際的デザイナーと地元のデザイナーとの交流の場となるのだ。個人でこの催しに参加することはできないが、ウェブサイト上でどのようなイベントなのか覗いてみれば、クリエイティブなものに対する想像力がかき立てられるに違いない。
人気作品「タンタン」のおかげもあり、ベルギーにはコミック・ブックが根付いている。コミック・ブックのファンにとって、ブリュッセルのBelgian Comic Strip Centerを見逃すわけにはいかない。しかし個人的な筆者のコミック・ブック名所は、La Crypte Toniqueである。ここは最新のコミック・ブックスと時代を超えたベスト・セラー、そして原画が並ぶとても美しい店である。ぜひ立ち寄ってみてほしい。
5.交通の便
筆者はバック・パッカーの旅が好きなので、交通の便は筆者にとってあまり重要な問題ではない。そうはいっても、ベルギーを巡るのがどれだけ容易なことか伝えておかねばならない。この国はとても小さいため、電車に乗れば数時間でどこへでもいくことができる。つまり、国中あちこち見て回ることができ、その大部分を満喫することができるのだ。我々の1週間の滞在で、ブリュッセル、ルーヴェン、ハッセル、アントワープの見どころを廻ることができた。
また、ほとんどどこの都市にも観光案内所があり、日本語の地図や交通案内を手に入れることもできる。日本人の観光客にも何人か会ったが、皆ベルギーを旅行するのは容易だと口にしていた。また、日本語ページもあるTourism Flandersのウェブサイトを活用していた人も多かった。そして、少しでも英語がしゃべれれば、ここでコミュニケーションに困ることはない。筆者の遭遇したベルギー人は皆英語が達者で、道中困ることはなかった。
さてこれでベルギーの旅の報告も終わり。皆さんも、こんな素晴らしい旅をしてみてはいかがだろうか。今回の記事には書ききれなかったが、ベルギーで見たクールな場所や事柄がまだあるので、これから記事にしていくつもり。ぜひチェックしてほしい。Goede reis! (良い旅を!)
執筆:Sam Mokhtary
翻訳:Asuka O.
2013年3月1日