個性的なアートと建築デザインで注目を集めているプラハ。歴史的建築物の中に見る先進的アートはアーティストを始め多くの観光客を引き付けている。このボヘミアンアート都市、プラハ出身のデザイナー、ズザンヌ・クビツコワは高い技術力とユニークなデザインでELLEやHarpers Bazaarといった大手モード誌から注目を浴びている。多くの若手デザイナーとは一線を画す彼女の個性とは一体何なのだろうか。
インタビュー:
(ズザンヌ・クビツコワ:ZK、菅波:UT)
UT: ユニークなデザインが注目を集めていますが、デザインを考える上で大事な要素は何ですか。
ZK: 流行を作るために服を作りたいとは思っていません。服をデザインして作るということは、ある意味、私にとっては物語を作るようなものなのです。どのデザインにもメッセージが込められていますし、服は、メッセージを伝える手段でもあるのです。ですから、私にとって服をデザインすることはファッションではなく、私のもつ哲学や思想の表現でもあるのです。
UT: 例えば?
ZK: そうですね、特に 幾何学を引用して様々なデザインに発展させていくことが多いです。例えば、キュービズムであったり、自然のオーガニックな要素であったり。いつ、どのように特定のデザインを作るかについてのルールはありませんが、幾何学的な要素はどこにでも見出せるので、毎日の生活の中でふと浮かんだアイディアを温めながら一つのストーリーに発展させていきます。時間はかかりますが、服を作る上でとても大切なプロセスです。
UT: なるほど、でも実際にどうデザインに反映されるのですか。
ZK: 例えば、ZIMA、チェコ語で冬という意味ですが、これは、 幾何学的な雪の結晶にヒントを得て作ったデザインです。また、キュービックコレクションは、デザインや建築に見られるチェコのクリスタルデザインにヒントを得て作りましたし、ドットコレクションでは、大小の水玉と色彩のグラデーションを使って光や水滴といった自然の要素を取り入れました。
UT: つまり、夫々の服には幾何学からヒントを得たメッセージが込められているのですね。このコンビネーションがユニークなデザインを生み出しているのでしょうか。この特性を保つために自分で服を作っているのですか。
ZK: ええ、クライアントと一緒に服を作っていく作業がとても好きなんです。メッセージを込めながら服を作っていくと同じデザインもクライアントによっては全く別の表情を持って生まれ変わるのです。そんな温かくて人間味のある作業が私のデザインや色遣いにも反映されて、最終的にユニークな作品へと仕上がっていくのだと思います。
インタビューを通じて、幾何学といった普遍性をファッションに取り入れる彼女の視点がユニークなデザインのインスピレーションとなっているのだと感じた。思想、デザインというジャンルを超えてファッションに関わっていくこと自体が、新しいアートの形なのかも知れない。
執筆と翻訳:菅波 映
2011年6月9日