Balthazar – Applause 「喝采」

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今日も真新しいアーティストが生まれ続けているが、昨年私が彼らのレコードを手にし、再生ボタンを押したときの興奮はなかなか忘れがたいものだ。彼らの名は、Balthazar。去年、デビューアルバム「Applause」をリリースした西ヨーロッパはベルギー出身の彼ら。アルバムを聞いてひとたび、私はこの若き才能たちの虜になった。個人的にはベルギーのバンドは、一貫してダークで曲調も断然マイナーが多いといったイメージだ。このBalthazarも例に漏れず、ダークでダウナーなサウンドを鳴らしているのだが、どこか若々しさと、現代っ子っぽいモダニズムが音の中に盛り込まれている。ソングライティングの質の高さ、楽曲の中毒性の高さ、貫禄すら感じる演奏の安定感・・・非常に面白い。私はこのバンドをいたく気に入った為、メンバーの1人、Jinte Deprezにお話を聴いてみることにした。

まず、昨年のデビューアルバム「Applause」のリリースについてお祝いを言わせてください!

ありがとう!

このアルバムに先立って、既に多くのツアーを回り、ヨーロッパの大きなフェスティバルでも何度かプレイされてますよね。このアルバムリリースによって何か状況の変化がありましたか?

これは、実際はヨーロッパデビュー盤なんだよね。僕らは、自分たちが今ツアーを回れるところでのみレコードをリリースしたいと思ってるんだ、だから将来的にはどうなってくるか、まだ分からない。でも、僕らの母国であるベルギーの国境を越えて出て行くことは凄く重要なことだった。もっと広く僕らが創った音楽を広められるのは本当に満足なことだし、まだ訪れたことの無い国や都市でツアーをする為には素晴らしく好都合だしね。より大きな土俵でプレイ出来ることは音楽を作る取り掛かり方に、絶対に良い影響を与えてくれるよ。

私たちの多くが、BalthazarをdEUSとのツアーで知ることになりました。このチャンスはあなた方に何をもたらしたのでしょう?

ビッグバンドをサポートして、彼らがどうツアーを回り、どのようにショーを作っているかを見られるのは素晴らしいことで、僕らはこのツアーから学ぶことができた。dEUSはベルギーで最もビッグなバンドの1つで、僕らも彼らの音楽を聴いて育ったんだ。だから、彼らとツアーを出来るなんて本当に興奮したよ。僕らの音楽はある意味では彼らから影響を受けていると思うよ。もちろん、僕らが彼らを真似たという事ではなく。でもdEUSを見に来た観客が僕らの音楽も好きなのは理解できる。だからこそのツアーは僕らにとって素晴らしいものだったし、沢山の良い反響があったんだ。嬉しいことに、dEUSからもね。

あなた方の音楽に関してですが、創造する上での過程はどのようなものですか?
特定のソングライターがいるのでしょうか?それとも、ただ集まって演奏しながら曲を作り上げていくのでしょうか?

曲はMaatenと僕が書いているよ。僕らは別々に曲を書くけど、バンド全員で演奏することでbalthazarの曲へと発展していくんだ。ソングライターが2人いることで、僕らの音楽はより興味深くなっていると思う。僕らのうち作曲したどちらかがその曲を歌っているから、歌声に飽きてしまうこともないしね。僕らの曲の書き方、歌い方や何について歌うかに違いがあるのは間違いないけど、ぼくらはそれをおまけと捉えているよ。最終的には、1つのバンドとしてのサウンドになるからね。

メンバーの中に、ヴァイオリンやトランペットを演奏できる方がいますよね?Balthazarとして活動する以前の音楽的歴史を暗示しているように思うのですが、皆さんはどのように音楽の道へ入っていったのか、聞かせてもらえますか?

僕らは全員、若い時に何らかの楽器のクラシックのレッスンを受けたんだ。ドラマーはトランペットだし、僕はバンドではギターを弾いているけれどヴァイオリンを弾いていた、というようにね。いい演奏ができて、それぞれが楽しんでいれば、誰が何を演奏するかはあまり重要じゃないんだ。その曲に必要であれば二本のヴァイオリンの演奏が出来るといった、選択の幅があるのは良いことだよね。

あなた方を「ライブバンド」と称した記事をいくつか目にしました。そして実際、私もあなた方のライブパフォーマンスの映像には圧倒されたとしか言いようがありません。このように記述されることに関して、どう感じますか?

ライヴパフォーマンスは、そのバンドが表すものにとても正直だと思う。レコード上では、楽器を追加で録音し、ドラムを整えたり、声の音程を合わせたり、やりたいことが何でも出来てしまう。それを批判するわけではないけれど、生で演奏する時は、そういう機会は無いよね。だから僕らは僕らのライヴパフォーマンスが、人々が思い出し、それについて話すものであることを本当に嬉しく思う。僕らはライヴ演奏を、あるべきサウンドにすること、そしてレコードからアレンジを面白い形に直すことに努力しているんだ。なぜなら、ライヴパフォーマンスはスタジオでのパフォーマンスとは全く異なる世界だから、僕らが出来る最善を尽くさなければ恥ずかしいでしょう。僕らはライヴがとても好きだけど、僕らが楽曲に沢山の物語がある、大きな身振りの物凄いエンターテイナーということではないんだ。音楽というのは自ら語るものだと思う。


Amsterdam Acoustics

タイトルの「Applause(喝采)」とは、ステージであなた方が聞くものを示唆しているのでしょうか?なぜこのタイトルにしたのでしょう?

いいや、全く違うよ。この言葉をタイトルに選んだのは、大きくて凄く大袈裟だから。僕らは自分たちの音楽をとらえ難く、空虚なものだと思っているから、僕らにとっては明らかに皮肉なタイトルだったんだ。あまり多くの人にそう捉えてはもらえないんだけど、僕らは美しい言葉だと思ってるし、それでいいんだよ。

アルバムのミキシングの為L.A.に行ってらしたと思うんですが、ベルギーでのミキシングと比較してどうですか?またL.A.でミックスをしたいですか?

向こうでは音楽の伝統が断然大きいから、凄く興味深かったよ。そこでは沢山の偉大なアーティスト達が彼らの作品を作ったから、雰囲気もすごく違うんだ。ベルギーに問題があるということでは無いけれど、装置と知識が別のレベルにある。僕らはアメリカ流のミキシングと、僕らのヨーロッパの音楽とのかち合いを捜し求めに行ったんだ。そしてそれがどんなサウンドになるかだけど、まぁ、セカンドアルバムで明らかになるよ。

セカンドアルバムはどんなものになるか、ヒントをもらえますか?

何と説明していいか分からないけど、僕らは凄く熱狂してるよ!でも、恐らく僕らがしようとしている事を知るためには何度か聞かなくちゃならないレコードではあると思う。ポップさを失わずも、より映画的なサウンドで、最後の曲はフランス映画のサウンドトラックみたいだよ。歌詞を書いたり、どんな風に歌うかだけでなく、これも単に僕らの音楽製作における次の段階なんだ。

いつか日本で演奏したいと思いますか?

もちろんだよ!言ったように、僕らは旅をするのが好きなんだ。それに、日本はいつもヨーロッパのバンドの話題にのぼるから、大いなる経験になるみたいだね。だから飛行機を用意してくれたら飛んでいくよ。

ニューアルバムを楽しみにしてます。そしてきっと近々日本でお会いしましょう。ありがとうございました。

どうやらニューアルバムは、1stアルバムとはまた違った表情を見せてくれるようだ。彼らがもたらす「興奮」は歓喜や、高潮するような快楽といったエモーショナルなものではない。地底を流れ、地上にあふれ出てゆっくりと押し寄せる熱いマグマのような「予感」。それは新しいアルバムへの期待に、もう私の胸を熱くさせている。

Balthazar オフィシャルサイト。

執筆/翻訳:城本 早苗

2012年8月20日