Maya Jane Coles – DJ Kicks レビュー

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Maya Jane Colesが人気を博した理由は、何か不思議なパワーがはたらいたからだろうか。一般的には、ラインナップの底辺から始まって、少しずつ人気の階段を上ってゆくものだ。小さなバーやクラブ、ライブハウスを何年もかけてまわり、少ない観衆の前で演奏を続ける。そして段々と名が世に広がり、トップスターに上りつめるのだ。しかし、Maya Jane Coles (以下Mayaと表記) はこれらのステップを大ジャンプで飛び越し、一瞬のうちに、名の知れぬDJ・プロデューサーから世界的なスーパースターへと駆け上がった。

  2010年にMayaを知っていたのは、コアなクラブファンと、新しいアーティストを見出すために仕事でクラブハウスに通うような人達だけだった。しかしその後、一瞬のうちに人気は跳ね上がり、2011年の終わりは、UK・Japaneseアーティストとして、世界中で話題の的になっていた。2020 VisionとCrosstown Rebelsのような有名レーベルから楽曲をリリースし、さらに、Resident Advisorが発表するワールドベストDJの9位にランクインしたことは周知の事実であろう。実は2010年のランキングではその名すら挙げられておらず、初のランクインで女性DJのトップに立ったのだ。彼女の秘密とはいかなるものか。オールドスクールなクラブサウンドと、ヘビーベース、スマートなプロデュースでそれらを完璧に組み合わせたことで、様々なジャンルのファン、house, techno, だけでなくdub, electronica そしてdubstepの観衆さえもうなずかせたのだ。

 2012年、MayaはDJ界のステージのセンターを勝ち取った。DJ界で確実な信頼を長く得続けているDJ Kicksシリーズの最新アルバムが、まもなくマヤのmixでリリースされる。その巧みな表現と幅の広い音を持つサウンドから、Mayaが以前DJとは違う道にいたとは、思いもよらないであろう。「私がDJを始めたのはここ最近なの。音楽活動始めた最初の頃は、ターンテーブルを持っていなかったわ。そして数年たってクラブミュージックに興味を持ち始めた時、mixを習い始め初めてクラブでDJをしたの。でもしばらくは、人前に出るよりも、スタジオで制作するような音楽活動に集中していたわ」。

  このmixは、Mayaが人生でどんな音楽から影響を受けているかだけでなく、彼女の音の多様性も示している。「ワンパターンでは満足出来できないことを、このmixで示したかったの」と彼女は言った。「これまではhouse baseの音をメインで制作してきたけど、Nocturnal Sunshineの名ではtwo-step/bassに影響を受けている楽曲もプロデュースしているわ。このアルバムでは、観客を踊らせるためだけの四つ打ちではない、特別なサウンドで展開していきたかった。」

  確かに、このmixアルバムの核は徐々に変化を遂げている。瞬間でダンスフロアを感じるTripmasterzとMarcel Dettmann、これらと別種のサウンドAdam Stacksの“Hey Love”とCaribou がすばらしいremixを手がけたVirgo Fourの“It’s a Crime”、これら全てが1枚のCDの中で見事につり合いがとれていて、mix全体にムードとやわらかさを生み出している。

  Maya自身の楽曲も独特だ。“Not Listening”はdeep houseのベースが段々増してゆくトラックで、Nocturnal Sunshineの名で発表した“Meant To Be”は、軽快なdubstep。これら違った種のサウンドが持つ、それぞれの特徴の間を行き来しているようだ。しかしながら筆者がこのmixで個人的に気に入っているのは、Last Magpieの“No More Stories”である。理由はシンプルで、garageからjungleに至るまで、全てのUKダンスミュージックシーンにおいて、今まさに求められているサウンドにぴったり当てはまるからだ。

  Mayaのmixアルバムは4月にK7! Recordsからリリースされる。これがもし待ちきれないのならば、3/17(土)にwomb で行われるCrosstown Rebels パーティのダンスフロアで、私たちTokyo Indieに参加してほしい。Crosstown Rebelsの一員としてMayaが日本に到着し、レーベルオーナであるDamien Lazarusがプレイする。興奮冷めやらぬ夜になること間違いない!

Maya Jane Coles DJ Kicks Tracklist:

01. Deft – Loqux & Past
02. Kris Wadsworth – Mainline (Jimmy Edgar Remix)
03. Chasing Kurt – Money
04. Bozzwell – In My Cocoon
05. Larse – Karoo
06. Milscot feat. Angela Sheik – All Alone (Domyan Just Slow Remix)
07. Adam Stacks – Hey Love
08. Phil Kieran & White Noise Sound – Never Believed
09. Sigward – Nuerd
10. Maya Jane Coles – Not Listening
11. Virgo Four – It’s a Crime (Caribou Remix)
12. Roberto Bardini – Hate Me (Muteoscillator Fairy Tall Remix)
13. Tripmastaz – Guess Who
14. Standard Fair – Little Helper 16-3
15. Nocturnal Sunshine – Meant to Be
16. Zenker Brothers – Berg 10
17. Last Magpie – No More Stories
18. Zoe Zoe – Church
19. Gerry Read – Roomland (Youandewan Remix)
20. T. Williams – Analog Tour
21. Marcel Dettmann – Translation Two
22. Claro Intelecto – Hunter’s Rocket to the Sky

執筆:Mark Birtles

翻訳:石川香

2012年3月8日