今年のフジロックには、British Sea Power (直訳 :英国海軍)が日本再上陸! と言ってももちろん本物の艦隊のことではない。今最もユニークでありながらも、純イギリス的な新進気鋭バンドの一つのことである。British Sea Power は、大衆受けすることと自分たちがただやりたいこととの間の危険な綱渡りを楽しんでいるかのようなバンドだ。マーキュリー賞にもノミネートされ、熱狂的な支持を受けた2008年リリースのアルバム'Do you Like Rock Music?'の後、独特の雰囲気に包まれたポスト・ロック的な'Man of Aran'へと一気に方向転換した。このアルバムはアイルランド沖の小さな島をテーマにした1934年の無声映画のサウンド・トラックとして作られたものだが、当時これはあまりスマートな賭けではないという声もあったろう。しかし、ふきっさらしのヨークシャーの荒野だろうが、デイヴォンシャーの岸壁上だろうが、地元のカーリング・アカデミーで演奏するのと同様に演奏しているかのような彼らからしたら、そんなことは全く気にかけるまでもないことなのだ。
そこで日本へのツアーに先立ち、今年リリースされたニュー・アルバム、'Vahalla Dancehall'を手に、ステージ・ダイビングやお得意の葉の飾りでお馴染みのギタリストNobleにBritish Sea Powerの全てを聞きに行ってきた。
さて、ニュー・アルバム、'Vahalla Dancehall'がリリースされたばかりですが、反響はいかがでしょうか。
とってもいいよ。イギリスツアーを終えたばかりだけど、これまでライブに足を運んでくれたことのなかったお客さんがたくさん来てくれたんだ。
ちょっと変わったタイトルですが、どうしてValhalla Dancehallなのですか?
タイトルにダンスホールって入れたら面白いと思ってね。これには二つの意味を込めていて、一つはボール・ルームでのダンスと40年代のスイング・バンド、もう一つは熱気漂うなまめかしいジャマイカのダンスホールのこと。Valhallaの方は、ノルウェーの北極圏にある小島に演奏しに行ったときに思いついた。北欧神話を彷彿とさせてくれるような気がして。そうしたら、全てが一つになってValhalla Dancehallっていう巨大な空間が僕らの中でできあがったんだ。
お気に入りの曲はどれですか?
毎週そのときに気分で違うけど、今はLunaの演奏しているのが楽しくてしょうがない。ようやくこの曲の新しいギターのパートができてきた、収録版の全てのギターの分を一台で演る予定。
色々と面白い場所で演奏することで有名ですが、どこが一番印象に残っていますか?
記憶ってこんなものだから仕方ないけど、一番最近のしかどうしても頭に浮かんでこないね。再生エネルギーの一つ、波力発電によって動くボートに乗ってテムズ川で演奏したことだよ。ウェストミンスター寺院や国会議事堂の前を通った。国会議員が「何だこの音は? なかなかいいじゃないか、よしアルバムを買って、再生可能波力エネルギーも推進していこう」なんて思ってくれてたらいいんだけど。
初来日から何回目かの後、日本について「ロック・スターだと自分が感じられる唯一の場所」と言っていらっしゃいますね。どうしてこう思われたのでしょうか?
台北や北京に行ったときにもロック・スターだな、って感じるね。驚いたけどアジアの観客は本当に演奏にのめり込んでいくんだ。それに引き替えヨーロッパの観客は自意識過剰でまわりの人にどう思われるかばかりを気にする。そりゃ僕らからしたら、観客が感情に突き動かされ、体の心底から楽しんでくれるほうがいいに決まってる。
日本へ来て、日本文化のおかしなところなど何か感じたものはありますか?
いくらでも! ほとんどが細かい話だから、全部聞いたら君が頭痛になって訳が分からなくなると思うよ。例えば今は日本食が大好きだけど、初めて日本に来たときは食文化に慣れるのが大変だったね。フジロックのときにまた日本食が食べられるのを楽しみにしている。
日本の音楽はお好きですか?
日本の音楽のことはよく知らないけど、Julien Copeが日本の著名なバンドについて書いたJapRockSamplerという本があって、そこに出てくるアーティストのものをいくつか聞いているかな。あと、日本のバンドBo Ningenが色々応援してくれている。彼らは今ロンドンで活動しているんだけど、本当に素晴らしいバンドだよ。
海外ツアーのときは、ご自身のステージセットを持ち込むのですか?
それはあまりないね、機材と衣裳を持ち込むだけでもすごく大変でコストがかかるから。だからもしもっと曲が売れたらできるようになるかもしれない。でも、今は無料で音楽をダウン・ロードするのが当たり前になってきているけど。
フジロックで日本にまた行くのを楽しみにしていらっしゃいますか。
もちろん。本当にわくわくしていて、また日本に行けるのが待ち遠しい。もうここ何年かずっと待ち望んでいたんだ。それから日本の皆さんが地震や津波のショックから立ち直ってきていることを心から願っている。どうか僕らの思いが届きますように。
フジロック・フェスティバル (FUJI ROCK FESTIVAL) 7月29日(金) 30日(土) 7月31(日)
日通し券:¥39,800(税込) ⇒ 【先行販売特別価格】¥39,000(税込)
1日券 ¥16,800(各日限定 10,000枚)
INFO: フジロック・フェスティバル
執筆:Mark Birtles
翻訳:小堤 明日香
2011年6月13日